オリンピック競技では、ブルースジェンナーに何
ジャックとジル | 映画と本と音楽にあふれた英語塾
アダム・サンドラー主演によるコメディ。共演は、アル・パチーノ、ケイティ・ホームズ、エウヘニオ・デルベス、デヴィッド・スペード、ニック・スウォードソン、ティム・メドウス。他に、カメオ出演として、ダナ・カーヴィ、レジス・フィルビン、シャキール・オニール、ジョン・マッケンロー、ブルース・ジェンナー、ドリュー・バリモア、ジョニー・デップ。監督は、『ビッグ・ダディ』(1999)、『チャックとラリー おかしな偽装結婚!?』(2007)、『エージェント・ゾーハン』(2008)、『アダルトボーイズ青春白書』(2010)、『ウソツキは結婚のはじまり』(2011)でサンドラーと組んでいるデニス・デューガン。
サンドラー・ファンとしては、絶対に見逃せないと思っていた 作品。ところが、IMDbの読者投票で10点満点の2.9点という悲惨さ。この目で確かめねばなるまいと憤慨していました。
しかも、ここ最近のサンドラー主演作品は、『ベッドタイム・ストーリー』(2008)を最後に、日本では連続3本劇場未公開だったのですが、アル・パチーノとジョニー・デップが出るせいか、なぜか(?)公開されることに。しかも、近場の新宿ピカデリーでの上映。これは見らねばとタイミングを計っていました。
嬉しいことに、酷評が幸いしたのか(!?)、インターネットをチェックすると、ピカデリーはいつ見てもガラガラ。ただし、今週の土曜日からは1日2回上映に減り、都合をあわせるのが難しくなりそう。今週は劇場に3回も通ってやや疲れていたのですが、ここを逃すと後がないと思って、時間がで きた昨日、自転車を飛ばして見てきました。
11時前の時点ではチケット購入者ゼロでしたが、カウンターでチケットを買うときには(松竹歌舞伎会会員が1300円で購入するためには、カウンターにおいて現金で買うしかないのです)3名の先客がいて、最終的には5名の同志(!)と一緒に見ることになりました。
さて、本編。
舞台は、現代のロサンゼルス(LA)。CMプロデューサーとして大成功を収めた42歳のジャック・サデルスタイン(アダム・サンドラー)は、妻エリン(ケイティ・ホームズ)と子供ふたりと一緒に豪邸に暮らす幸せな日々を送っています。
ところが、悩みの種がひとつ。双子の妹ジル(サンドラーの二役)の存在です。いまも生まれ故郷のニューヨーク、ブルックリンに住んでいるジルは、独身。先� ��母親を亡くして、生きがいは年に一度ジャック家族と一緒に感謝祭を祝うこと。しかし、子供のころから周囲のことなど何も気にしない変人のジルに、ジャックは悩まされ通し。会うのが嫌でなりません。
ロッカールームの内部はどのようなものですか?しかし、そんなジャックの気持ちなど知らないジルは、時差の計算もできずに朝の5時に到着する便でLAにやってきます。しかも、大量の荷物を抱えて(ジャックいわく「バスケットボールのチームを連れてきたのかい?」)。そして、予想通り、さまざまな騒動を繰り広げ、ジャックはうんざりして、早く追い返そうとしますが、ひとり暮らしのプータローのジルは居座ってしまいます。
そのうえ、ジャックには仕事での悩みが生じてしまいます。アル・パチーノを使って、ダンキン・ドーナッツの新商品ダンカチーノという名前のカプチーノのCMを作ってほしいというのです。しかし、相手はCMなどには絶対に出ない超大物。どうしたことかと頭を抱え ながら、接近を図るためにパチーノ(本人)が見に来るというLAレイカーズの試合をジルを連れて見に行きます。
すると、どうしたことか、パチーノは一緒に来ていたジルにひと目ぼれ。ジルを追い掛け回しだします。ジャックは、これ幸いと、パチーノにCM出演に応じさせようとするのでした……。
いやはや、実に楽しい!
下品で、悪乗りで、それでいて最後はホロッとさせる温もりがある。サンドラー・コメディの王道を堂々と歩む一作です。嫌いなら見ないでよろしいと言い切る潔さが、本作にもあふれかえっています。何せ批評家から酷評されても、世界で1億ドル以上を売り上げるのです。サンドラー・ファンとしては、溜飲が下がります。
まずもって、ジルの造形がすばらしい。双子として、気持ちは生まれ� ��がらジャックの嫁気分。それが鬱陶しいジャックですが、ジャックにしても決して嫌いというわけではない。そんなジルをサンドラーが実に楽しそうに演じています。
もちろん、最初は「キモい」状態。
事実、ジルの下品さは、絶好調です。寝汗でベッドに人影(human shadow)を作り、下痢をするとものすごい音を立てて、ジャックから「トイレでバイクが走っているのか」とあきれられるほど。そのうえ、いつものユダヤ人ネタはもちろん、老人蔑視、ホームレス蔑視の連発。映画館の中で平気に携帯電話に出るマナーのなさ。本作を嫌う人は、ジルを徹底的に嫌うのだろうと思わせます。
ですが、それを見たいのが、サンドラー・ファン。ガハガハ・ニヤニヤしながら、目はスクリーンに釘付けです。
そうしていると、ジルが実にキュートに見えてきます。その最大の貢献者は、アル・パチーノ。他のだれにも分からないジルの魅力を見抜けたのは、天下のパチーノだけという設定がすばらしいのです。
サーフランシスドレイクは出航場所そのうえで、パチーノの悪乗りが、すばらしい。シェイクスピアを上演中に客席で携帯電話が鳴ると、演技を中断して客を注意したり、それでもジルのことが気になるパチーノは上演中にジャックからの電話に出て舞台を中断させ、客席からブーイングを受けたり、そのうえ最後はダンカチーノのCMにラップを口ずさんで登場するサービスぶり。どうしてあの大俳優がと眉をひそめた見物が多かったようですが、どうしてどうして。あの大俳優だからこそこの悪乗りが滑らないのです。パチーノ、凄すぎます。拍手です!
さらに、サンドラー映画のお約束である、主人公がスポーツ万能ぶりを示すシーンも今回はジルの担当。プロのボディビルダーであるグンター� ��シュリアカンプ(本物!)ですら挙げられない130kgのバーベル・プリーチャー・カールを軽々とやってのけたうえに(こんなことができる人間は、おそらく地球上にひとりもいますまい)、サッカーをやれば見事なドリブルとボレーシュートを決めまくります。ウソだと分かっていても、カッコいい。そして、このスポーツ万能ぶりの能天気な明るさがジルに、初めてのすばらしい恋をもたらします。
というわけで、単なる最低の「キモい」から、パチーノだけが分かる「キモ可愛い」に変わり、最後は「キモカッコいい」になるジル。しかも、最後幸せをつかむジルの存在は、ファンにとって最高のプレゼントでありました。
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画質(1.85:1/デジタル): A+
撮影は、『ロジャー・ラ� ��ット』(1988)でアカデミー撮影賞にノミネートされた、『遊星からの物体X』(1982)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985〜1990)三部作、『フック』(1991)、『ジュラシック・パーク』(1993)、『アポロ13』(1995)、『ハート・オブ・ウーマン』(2000)、『ホリデイ』(2006)のディーン・カンディ。機材は、アリ・アレクサHDカメラを使用。ProRes 4:4:4 (1080p/24)のソース・フォーマットを、DI(2K)処理したマスター・フォーマット。
座席は、前から4列目中央の席。ビスタ・サイズのスクリーンがちょうど視野に入るイチです。やや見上げる状態ですが、少し前に腰をずらすとちょうどよく好きな場所。3席ほど右側に別の見物がいましたが、スクリーンを見ている限り、ほとんど気にならない席です。
さて、画質。
ピカデリーの公式サイトには「デジタル上映」の表記はありませんが、『J・エドガー』と同じく、明らかにデジタル上映。しかも、アリ・アレクサという最新HDカメラを利用していますので、細部にいたるまで鮮明そのもの。グレインはほとんどないものの、彫りは深く、一般的なフィルムルックさはありませんが、シャープでクリアな映像にウットリとしていま います。
クリケットは、上位6指導上のボールを打つ発色は、ニュートラル。色数は多く、艶やかで華やか。後半のクルージングシーンなど、その派手な色使いに息を呑むよう。肌の質感もナチュラル。ジャックとジルの肌の違いも、はっきりとわかって怖いほどです。
暗部情報は豊富。黒もよく沈み、階調も滑らか。とにかく違和感がまったくないすばらしい陰影表現。さすがディーン・カンディという印象。見事な映像です。
音質(Linear PCM): A
ノイズ感のない透明度の高い音が、自然とサラウンドする音響設計。音量レベルを含め、これ見よがしなケレンはないものの、気持ちよく映画の音に浸っていられることを発見してしまいます。なかなかできない経験です。相当繊細なサウンド・デザイナーの担当なのでしょう。
超低音成分は、控えめ。セリフの抜けも、文句なし。メタリックな響きもゼロ。それでいて、もの足りなくない。本当に高品位な音です。
英語学習用教材度: C
字幕翻訳は、稲田嵯裕理。
セリフは、大量。ですが、アメリカでのレーティングが"PG"であるように、俗語・卑語は少な目。安心して、テクストとして使えます。字幕も、難しいどぎついジョークをうまくこなした立派なもの。とはいえ、すべてのジョークをフォ� �ーしていませんから、留学をめざすのであれば、日本語字幕に入っていない情報を理解して笑えるようにならねばなりません。
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気になるところを、アト・ランダムに。
☆原題も、Jack and Jill。もちろん、この名前は、英語圏では有名な童謡から採られたもの。ジャックとくれば、ジルと応じる。日本で言えば、太郎と花子(古い!)のような関係です。
☆自分たち双子のことを"womb mate"とジルが呼ぶのには、大笑い。字幕では「子宮メイト」と出ていましたが、これは"womb mate"を「ウームメイト」と発音することを利用した、"roommate"のもじりであることは言うまでもありません。
☆個人的に、笑いに火が点いたのが、テレビのクイズ番組でもらった賞品のジェット・スキーをジルがジャックの自宅のプール(!)で走らせる場面。プールの壁にぶつかって、5メートルほど真上に上がって、落ちて大破するというオチ。そのバカバカしさに腹をよじりました。
☆アカデミー賞には最も無縁な大ヒット作。その意地でしょうか、途中でなぜか突然パチーノの自宅の中で三角ベールボールをやらせて、ジルが打ったボールにオスカー像を壊させてしまいます。唖然として、大笑い。批判精神満載。最高のカタルシスでした。
☆パチーノが、『ラ・マンチャの男』への出演を依頼� ��れているということで、「見果てぬ夢」を途中で披露してくれるのですが、これがすばらしい。ブロードウェイで上演されることがあったら、飛んで行きたいくらいです。
☆ジョニー・デップが、なんとパチーノと一緒にレイカーズ戦見物。奇しくも『フェイク』(1997)以来の共演。サンドラーが好きなんでしょうねえ、よく応じてくれたものです。
☆元NBAスター、シャキール・オニールは、ハムのCMに出ています。それにしても、バスケット好きのサンドラーらしい設定と人脈です。
☆元テニス・スター、ジョン・マッケンローは、髪の毛真っ白。いきなり怒り出す、いつものキャラクターで登場です。
☆1976年のモントリオール・オリンピックの十種競技で金メダルを取ったブルース・ジェンナーが、パチーノのシェイクスピア劇に出ているのには、ビックリ。アメリカではまだまだ人気があるん� ��すね。
☆あれはひょっとしたらと思っていたら、やっぱり本人でした。ドリュー・バリモアが豪華客船の船客として顔を出しています。
☆個人的に好きなニック・スウォード ソンが、本作でもジャックからいじられる部下役で登場します。笑ってやってください。
☆7900万ドルの製作費で、これまでのところアメリカで7335万ドル、海外で3160万ドル、計1億495万ドルの売り上げ。何のかのと言われながらも、見事な1億ドル越え。サンドラー主演映画としてはもの足りませんが、たいしたものです。
☆アメリカでは、3月6日にBlu-ray Discが発売されます。
いま分かっている仕様は、次の通りです。
容量: TBA
映像: 1080p/2.39:1?/TBA (video codec)
音声: DTS-HD Master Audio 5 .1(英語)/Dolby Digital 5.1 (英・仏・西語)
字幕: 英・仏・西語
次の特典がつく予定です。
Four behind-the-scenes featurettes:
- Here Comes Jill
- Laughing is Contagious
- Look Who Stopped By
- Boys Will Be Girls
Two Blu-ray-exclusive featurettes:
- Stomach Ache
- Don't Call It a Boat-Royal Caribbean
今日現在Amazon.comで19.99ドル(定価40.99ドル)。また、大量の特典がつくのでしょうねえ。欲しくなります。
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サンドラーのコメディは、やっぱりいいですよ。サンドラー・ファンは、評論家の言葉など気にせずに、必見です。ピカデリーは、オススメできます。
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