名牝達の後宮 - 創造は力
水夏 〜SUIKA〜 第4章「死神の生まれる理由」
7月27日
今日も悪夢でお目覚め。お嬢と2人で朝食をとる。女将さんがいなくなったというのに、お嬢は妙に明るい。お嬢は、ずっと誰とも繋がりを持たず、親しくなった人は死んでしまうか、愛する人を失って悲嘆に暮れてしまう。
死神でさえなければ……
そう思った宏は、食後に以前女将さんが持ってきてくれた服を着せてみることにした。いつもの黒い衣装では死神を連想してしまう。気を遣って部屋を出ようとする宏だったが、お嬢は見ててくれないと嫌だという。相変わらず無頓着で、浴衣の帯を解き始めたのでその手を慌てて掴む。さすがに、良くないと思うのだが、体は正直だった。
お嬢が浴衣をはだけたところで突然倒れこんでしまった。突然体の力が抜けたのだという。と、そこに女将さんのお悔やみに来ていた華子が入ってきた。浴衣のはだけた少女が倒れこんでいる情景に、すかさず蹴りを浴びせて110番通報をする華子。冗談ではなく本当にかけたので宏は慌てて携帯を奪って電話を切った。その後、訳を話してどうにか納得してもらった。それでもお嬢は、宏がいないと着替えないと言うので、2人で見守ることとなった。
惜しげもなく裸体をさらすお嬢が最初に着替えたのは黄色いワンピース。まあ、最初は普通だったが、その後は制服にメイド服・・・。女将さん、こんな服持ってたのか?熟女のメイド服っていいかも。そういえば、第2章でメイド服を千夏にあげると、第4章でお嬢のメイド服姿が見れるって書いてあったけど。このメイド服は千夏が持ってきたということか。タイミングからして、つまり華子と千夏は同一人物?二重人格だとかそういう設定ですか?
お嬢に、どうしてこの村に来たのか訊いてみたら、神様に、この村に忘れ物があるから探して来いと言われたらしい。
この後、3人でちとせの部屋に行ってみたが、病院に行っていていなかった。華子と別れた後、お嬢と遊ぶことにした宏は、直前に石を蹴って遊んでいたし、サッカーをやろうと提案したが、2人じゃできないということで却下。ま、どの選択肢も2人じゃできないんですけどね。お嬢の希望を訊いてみたら、泳ぎたいと言うので、商店街で水着を買って海へと出かけた。
何がAllofMP3と何が起こった
第3章で出てきた海岸でした。人が多く、誰もお嬢が見えないので、ぶつかってしまう。そこで、この海岸に穴場があることを思い出し、海岸線をひたすら歩く。やはり、そこには誰もいなかった。しかし、地元でもない遠い村の人間が2人もこの穴場を知ってるって凄くね?
宏はお嬢に紙袋を渡した。商店街で買った水着である。当然お嬢が見えないのだから、さぞや怪しまれたことでしょう。そんな店員に選んでもらったものは、スク水でした。そういう趣味と勘違いされちゃったのでしょうか。ともかく泳ぐことになったのだが、お嬢は泳げないみたいなので、バタ足から教えることに。結構上達して一人で泳ぎに行くお嬢だが、浅瀬で溺れていた・・・
村に帰るともう夜になっていた。帰り道、お嬢が手を繋いできた。海でも手を繋いでいたので、それを真似すれば楽しかった時間が長引くのだとか。
ほう〜
またしてもグッドタイミングで華子が登場。手を繋いで歩いている2人を見てニヤニヤ。宏は手を離したかったが、鈍感なお嬢が強く握っていて離してくれない。華子は帽子を持っていた。拾ったんだそうな。第2章でさやかが飛ばしたあの帽子ですな。宏はその帽子に見覚えがあった。七夕の日に草原で見かけた女の子が被っていたものだった。交番に届けるつもりだった華子だったが、それならばと宏に渡して消えてしまった。
その女の子の素性など知らない宏だったが、お嬢が知っているから自分が届けると言ってきたので頼むことにした。この後、さやかの父親に届けるわけですね。
その後、お嬢が力が入らなくなったと言って道端で倒れこんでしまったので、おんぶして宿へと戻った。
7月28日
悪夢で目覚める。お嬢はまだ眠ったまま。朝食を終えるとお嬢が目を覚ました。ありがとうと感謝するお嬢に、大した事じゃないと謙遜する宏だったが
嬉しいから。夜中とかに、ふっと目が覚めて、あなたが居るのが分かると、すごく安心するから
だから、ありがとね……
自分の看病とお嬢の回復は関係ないから礼など要らないと言う宏に
……いらなくてもあげるもん
ボク、感謝してるんだから。だから、次に倒れた時、看病してくれなかったら……
怒るよ
と返すお嬢。お嬢とちとせの姿が重なる。
お嬢が眠った後、メデスのお説教タイムに。
救出しようと人々
お前がしなくてはいけないのは、死後の世界を気にすることではない
今、お嬢やちとせをどうするかだ
考えていると言う宏に
お前はいつまで考えているつもりだ?
考えても駄目なら、動くしかあるまい
踏ん切りを付けてくれたメデスに、ありがとうと言い出そうとした宏だったが、その言葉は全てが終わってからだと思って止めた。
ひとまずはお嬢の元にいることにした。お嬢のリクエストで素麺を作ってあげた。体に力が入らなくて上手く素麺が掴めないお嬢。自分でやると頑固に何度も繰り返していた。見てられなくなった宏は、お嬢の箸を強引に奪った。
つまんないな……
と呟くお嬢に、2人が出逢った頃にお嬢が言っていた「ひとりでもつまらないことでも、ふたりなら楽しくなる」という言葉を言って聞かせる。お嬢の顔に笑みが戻った。
この後お嬢を寝かせた後、宏はちとせの元へと向かった。ちとせの部屋の前に行くと、中から嗚咽のようなものが聞こえてきた。ノックすると、いつもより長い間の後、返事が聞こえた。そこには、いつもの笑顔のちとせがいたが、赤く腫らした瞳を見ないように宏は視線を外す。宏はベッドに腰をかけ
夜更かしは、良くないぞ
と注意した。意味を理解したちとせは
うん……そうだね……
といって、額を宏の肩の上に置く。宏はちとせの肩を抱いてやった。
お嬢に貸した漫画のことを思い出したちとせが、漫画の感想が聞きたいというので、宏はお嬢に言っておくと約束するが
絶対頼んでよ。お願いだよ。なるべく早くって
と力強く宏の腕を掴んで念を押した。この必死さ何だかやばそうです。手術のことを話すと、ポジティブシンキングで、手術が終わったら4人でたくさん遊ぼうと、曇りのない笑顔を見せるちとせ。目を瞑って4人で楽しく遊ぶ光景を想像する宏でしたが、どうしてもそのイメージが浮かんできませんでした・・・
旅館に戻る。お嬢がちとせのことを話し出した。
どうして、チーちゃんは看病してあげないの?
と素朴な疑問。しかし、宏には耳の痛い質問。自分がいても病気が良くなるわけでもないから意味はないと答える宏だが
だって、あなたが居たら、チーちゃん喜ぶよ。知らなかったの?
なぜフレデリック·ダグラスはとても成功しましたか?
チーちゃんが喜ぶんだもん。大事な大事な、意味
それを聞いて、ずっとそばにいてやらなかった自分への悔恨の念にかられた宏は、頭を冷やしに外へと出た。考え事をしながら駅前まで来たところで女性の悲鳴が聞こえてきた。
やはりボンバイエで野球を見ていた華子だった。贔屓のチームが逆転負けしてヤケ酒する華子。宏も付き合わされる羽目に。酔いつぶれた華子を抱えて実家まで送ることになった。ちとせの部屋に連れて行けと言われ、何でかと聞いてみると
元気……づける
という
お前は、ほんとに阿呆だ……
彼女の……不安にも気が付かなくて……
そう言ったっきり華子は黙りこくってしまった。宏は華子玄関に置いてちとせの部屋へと向かった。
ちとせの横に腰をかけ、実家で一緒に暮らすことを告げた。そして、今まで側にいてやれなかったこと、そして笑顔ばかりを押し付けてしまったことを謝った。手術が不安かと訊くと、そんなことはないと強がるちとせ。そんなちとせの肩を抱き寄せ
ごめんな。ほんとは、おれがこんな事言っちゃ、いけないのかもしれないけれど……
おれは、不安だよ
と激白。そして、その不安から自分が逃げていたことを。
ちとせが不安じゃ無いって言うなら、おれが代わりに不安になる
代わりに悲しんで、代わりに怖がるんだ。どうだ?
ちとせはクスっと笑って
……お兄ちゃん、とってもヘンな事言ってるよ
側にいてくれるなら、代わりじゃなくて、一緒に、でしょ?
一緒に笑うの
そして、嬉しいのに涙が出てしまう自分もヘンだと言って、宏の胸で泣いた。宏もその細い体を抱きしめてやる。妹の泣き顔を見るのは初めてだった。やっと本当のお兄ちゃんになれた気がした。そして、約束通り一緒に泣いてやった。
その帰り道、後ろから華子に声をかけられた。雰囲気からして千夏の方みたいです。いつもと違う雰囲気に
酔うとそうなるの?
と訊く宏ですが
嬉しいとこうなるの
と答える華子(千夏)。この日は第2章が完結した日でしたね。ちとせが喜んでいたことも知っていて
君の顔を見れば分かるよ……。お兄ちゃんの顔してるもん
とか、華子に言われたら鳥肌モンの台詞を華子に言われる宏。お嬢の探し物は見つかったのか聞かれ、よく分からないと答えると
本当は、もう見つけてるんじゃないかな……
と呟く。つまりは大切なもの=宏、もしくは人との繋がりってことですかね?
旅館に帰ると、華子から預かっていた帽子が消えていた。お嬢に聞いたら、あの身体で返しに行ったのだという。どうしても今日返したかったらしい。宏にもその意味は理解できた。お嬢が寝た後、メデスを外へと連れ出した。
何であんな状態でも仕事をしなければならないのかと批判する。そんなことを命令する神様なら殺してやるとまで。メデスは死神が生まれる理由を語り出した。死神になれるのは、皮肉にも、やさしい魂だけ。何らかの事情で彼岸に運ばれなかった魂が、彷徨って彷徨って行き着いた先が死神なんだという。魂が運ばれなかった辛さを身にしみて分かっているからこそ、必死になって魂を運ぶことになる。お嬢はもう半世紀もこんな生活を続けているのだという。お嬢の孤独さを想像しても理解することはできない。
ありがとう
メデスが宏に礼を言った。
そこにお嬢がやって来た。起きたら宏もメデスもいなくなってて、捨てられたと思ったようで怒っていた。メデスの話を聞いた後だけに、お嬢の不安な気持ちが痛く伝わった。宏は謝って彼女を抱きしめた・・・
(つづく)
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