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カナダとの国境付近における最近の政府による国境警備の実態について、最近Seattlepi.comに興味深い記事が掲載されましたので概要を事例と共に紹介いたします。
まずニューヨークアップステートで実際に起こった事例ですが、2人 の国境警備員が突然、公共バスに乗り込んできて、全ての乗客に対して国籍の確認と身分証明書の提示を求めてきたそうです。その際、警備員の連れた犬が一つ のナップサックの前で吠え、その持ち主である中国系難民の人は恐怖に怯えていたということです。実際ナップサックの中にはマリファナの葉巻が入っており、 その人はそのまま身柄を拘束されたそうです。
今日の国境警備局員はカナダとの国境警備を様々な形で強化しているのですが、ニューヨークに限らず、バーモントやモンタナ、ワシントン州など、実際カナダとの国境から100マイルにおいてテロリストを捕らえるための警備体制がとられています。
しかし最近報告されたHearst Newspaperによる公共向けデータによると、莫大な国境警備資金と警備員の増員にも関わらず、捕らえるのはテロリストやその関係者ではなく、殆どが、いわゆる一般的な不法移民だということです。これら実態については様々な意見があるのですが、関係者の中には9.11同時多発テロ以降、誤った形で実施されている反テロリズム政策と移民法施行の混乱の産物とも言える、と述べる人もいます。
そのような中、CBPはここ5年でその国境警備に関わる予算が2倍になり、2009年においてはその予算額は$11 Billionにも及びます。9.11同時多発テロ以前はカナダとの国境から5,000マイルを僅か340人の国境警備局員にて監視していましたが、現在ではその数は1,530人にまで増えました。
ある国土安全保障省の関係者は次のように本音を言っています。"より多くの政府職員を実際の国境警備に回すことが、テロリストの侵入を防ぐことにつながる、ということを私に言わないでくれ"と。9.11同時多発テロを受け、メキシコとの国境よりもカナダとの国境からより多くのテロリスト侵入の可能性が高いというCBPやFBIの 見解に基づき、アメリカ政府は穴だらけのカナダとの国境に眼を向けてきました。しかしニューヨーク・バッファロー地区の国境警備を担当しているある職員に よると、この無限大に広がる国土での完全な国境警備はある意味チャレンジで、どのような国境警備を行えば国の安全を守ることができるのでしょうか。そのよ うなことは無理である"と語っています。
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更にFBI(連邦捜査局)のニューヨーク・アルバニー地区の担当で、現在モントリオールから南400マイルを監視している特別捜査官は、テロに関連する情報収集に携わる職員の増員とそれら情報の共有そのものが9.11同時多発テロ以降の国境安全に貢献してきている、と語っています。つまり国境付近の安全、強いてはアメリカの安全は国境警備そのものではなく、未然の情報収集によるものということを示唆しているのです。
実際、カナダとの国境を通してアメリカに不法侵入してくる人の数はメキシコとの国境から進入してくる人の数の1%にしか過ぎません。また実際の不法侵入者は社会に脅威を与える人達ではなく、それら不法侵入者をターゲットとした行き過ぎと言っても過言ではないほどの現在の北の国境警備の現状には多くの疑問が投げかけられているのは事実です。
2008年暮れ、シアトルで弁護士として活躍するSullivan氏はこのような実態の中、国境警備局に対し、国境警備を通して逮捕された微量のマリファナ所持者に対するケースを彼の弁護士事務所に依頼しないよう要請したという、興味深い事実もあります。
一方で、ある国境警備局員はアップステートニューヨークに関して言えば、ロチェスターやシラキュース、バッファローなどニューヨークシティーや中西部の中心 都市とつながっている駅、空港、バスターミナルでの警備には効果があるとも述べています。しかしながら、昨年、ロチェスター国境警備局は1,523人を確保した一方で、そのうちの87%が軽罪で、その僅か0.05%のみが刑犯罪として検挙されたに過ぎませんでした。またバッファロー地区を担当するCBPの広報担当官であるPrice氏も、逮捕者の殆どは単なる不法移民であり、そのうちテロリストとしてテロと何らかの関わりを持っている人の逮捕は殆どないと述べています。
事実、最近アメリカ司法省が発表した調査報告書によると、9.11同時多発テロ以降、カナダとの国境警備により捕らえられたテロ関係者は僅か1名だったということです。実際、2008年CBPによる検挙のうち90%が一般的な不法移民に関するもので、殆どが強制送還や不法滞在後の違法なアメリカへの再入国に対するものでした。
ロチェスターで移民法に関する支援プログラムを実施しているディレクターのRuehle氏は次のように語っています。"CBPは確かに数としては多くの逮捕数を上げているかもしれません。しかし彼等は実際テロリストとして捕らえるべき重要人物のリストに出てくるような人々を捕らえているのでしょうか?"と。
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ここでニューヨークでの事例を一つ紹介します。あるバレンタインの日、Chet Childersさん(36歳)はウクライナ人のTetyana Tsymbalさん(26歳)と結婚しました。Tsymbalさんのアメリカでの就労ビザは切れていたのですが、アメリカ人である夫のChetさんをスポンサーとした永住権申請については、住まいとなるChetさんの故郷ワシントン州に到着後行う予定でいました。結婚3日後、二人はワシントン州へ向かいアムトラックトレインで移動途中、Tsymbalさんは、シラキュースにて突然列車に乗ってきた国境警備局員により捕らえられ、その後、身柄を拘束されたそうです。翌朝、彼女は留置所から夫に電話をし、約1分半ほど話をしたそうですが、夫のChetさんによるとその僅かの会話の中で彼女を慰めることが唯一できたことだったそうです。拘留の4日後にそう語ってくれたChetさんでしたが、その4日間はその電話による彼女との会話以外、彼女と話す機会はなかったそうです。結局TsymbalさんはChetさんが保釈金の$5,000を支払うまでの約1週間、刑務所に身柄を拘束されていたそうです。現在彼等はワシントン州にて移民法裁判所から意見聴取のための召集要請を待っています。
テロに関わる人物の検挙率について、その数は告訴数75,000件以上に対し、僅か2件という驚くべきデータがあります。このことに関し、ニューヨークのBrenner弁 護士は、結果として刑事犯罪につながらない且つ社会に対して脅威とならない単なる不法移民の取締りに対し、政府が莫大な資金と人員を投入していることにど れ程の価値があるのか、その価値に対して疑問を投げかけています。そのような状況の中、数ある移民支援団体のうち、現在の国境警備に対し法的責任を求めて いる団体も現れてきています。
このような現状に対して国境警備局は反論しており、あくまでも国境警備の仕事はあらゆるアメリカへの不法侵入を防ぐことであると主張しています。しかし匿名 のある国境警備局員の話では、捕らえられる人の多くは最近アメリカに不法侵入しているわけではなく、数年も前にアメリカに入国し、アメリカ国内を旅してい る人であり、その人達に対する逮捕ケースが殆どだということです。更に当匿名警備局員は、全不法移民者を捕らえるという施策は、非常にばかげており、現在 実施していることは"イミグレーション・ダンプスター・ダイビング"、つまり移民のゴミ箱あさりである、とも語りました。
"ナイアガラの滝" "墓地"
しかし一方で、そのような活動の中、年間を通して1件だけでもテロリストまたはテロに関与している人物を捕らえることができれば、それは十分な仕事に値するという意見があるのも事実です。
今日の北の国境警備強化の要因は9.11同時多発テロなど様々ですが、1999年に起こった事件もその一つです。1999年のある日、Ahmed Ressen容疑者はBritish Columbiaからトラックと共に船に乗り、ロサンゼルス空港を爆破しようと、そのトラックに爆発物を満載していたところPort Angelesに おける通関検査によってその行為が見つかり、身柄が拘束されました。この事件は、その内容及び規模から重要な事件として位置づけされていますが、先述のよ うな国境警備によって見つけ出されたものではなく、通常の通関権検査によって見つけ出された、というのが皮肉にも事実です。
そこで、北の国境警備の実態について、関連する事例をいくつか紹介していきます。
ワシントン州Forks市で最近、国境警備員により2人の高校生が国境警備員により身柄を拘束されました。二人は卒業生総代、そしてレスリングチームのエースということもあり、メキシコに強制送還されないよう何千人にもの地域住民がアピールの集会に集まりましたが、結局強制送還を余儀なくされました。
Forks市の教会区で司祭のThomas Nathe氏によると、教会を訪れる教会員の半分は移民の人達で、最近近くに検問所が出来たことで、多くが教会へ行くために通りを渡ることに恐怖を感じているということです。更に、司祭は、ここはアメリカであり、自宅から僅か6マイルの場所で自分の国籍について質問が執り行われるポーランドでもロシアでもないと、強く主張しました。
次にあるエクアドル人(22歳)の事例を紹介します。彼は9年間アメリカで生活してきており、お父さんが医療器具の配送の仕事で国境南の国道87号 線の検問所で身柄を拘束されたことで、お父さんのエクアドルへの強制送還を目の当たりにしました。お父さんは観光ビザでアメリカ入国後、数年間不法滞在が 続いていたということです。お父さんの強制送還後、彼のアメリカでの生活は一変し、借金だけが残りました。残されたのは22歳の彼と、彼のお母さん、そして2人の弟たちです。アメリカに残された家族の半分は合法的にアメリカに滞在しているにもかかわらず、お父さんは強制送還されてしまいました。
次にカナダへの移住を希望する家族のカナダ移住を支援する在バッファローの支援団体VIVEのエグゼクティブであるブライアン氏による話を事例として紹介します。それによると、2008年の1年間、カナダ移住のため、カナダで移民審査官との面接を待っている間、国境警備員やICE(移民税関執行局)のいずれかによって逮捕されたケースが20から40家族程あったということです。つまり、それら政府職員は自主的にアメリカから出国しようとカナダへの移民申請プロセスの最中にある人達の身柄を拘束している実態があるのです。一方で国境警備局員のCotsworth氏の見解では、カナダでの書類申請など一切関係なく、全ての人を平等に取り締まっているということです。ただ彼らの活動の源は我々が支払っている税金であることは言うまでもなく、それら使い道については未だ疑問が残ることは否めません。
最後の事例として5年前の事件を紹介します。その日、アメリカバーモントで雪道を歩いていたVicknell氏とその妻が、木陰から突然現れた国境警備局員に銃を向けられ、立ち止まるよう指示されたそうです。警備員は当時、麻薬所持者やその密輸者を取り締まるために国境付近を警備しており、二人に身元確認を迫ったそうです。その時の恐ろしい心境をVicknell氏は生々しく語っていました。
専門家の多くは移民法システムが改善されない限り、このまま社会に対して脅威とならない人達に対する取締りや逮捕が集中して行われ続けるだろうと予想してい ます。ある匿名の国境警備職員も、社会に脅威とならない人達には合法的なステータスを与え、より効果的な国境警備策を講じるべきであると述べています。更 に彼は次のように語りました。"私は国境での取り締まりを行うためのここにいるのでしょうか。いいえそんなことはありません。私は移民法の施行のためにここにいるのでしょうか。まさにその通りです。それを通して我々は国境の安全を築き上げているのでしょうか。いいえ、そんなことはない"と。
このようにいくつか事例や各関係者の見解を抜粋し紹介しましたが、現在の国境警備に対する政府による施策、及びその大義名分に対しては議論の分かれるところ であり、実際社会にとって脅威とはならない不法移民に対する対策についても大きく議論が分かれます。そのような中、現政府の国境警備強化は引き続き行われ ており、実際、カナダとの国境付近で国境警備局員が突然現れ、尋問を受けたという話を最近よく耳にします。皆さんアップステート等へ旅行されることもある かもしれませんが、その際、不意にも道端や公共の乗り物の中で国境警備局員より身元確認を求められることがあるかもしれません。
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